自社工場のカーボンニュートラルに向けて

Yoshitaka Arai
荒井良隆
ビジネスデベロップメントマネージャー
Published:
バイオガス精製
産業製造・プロセス

20211031日から14日間、英国グラスゴーで、COP26(気候変動枠組条約締約国会議)が開催されました。気候変動というグローバルで取り組むべき課題を議論します。世界リーダーズ・サミットでは日本からも岸田文雄内閣総理大臣がスピーチしたほか、130カ国以上の首脳が集まりました。


自動車業界が直面するカーボンニュートラル

当会議では各国の政府間の協議だけでなく、自動車分野も気候変動に関わる重要なセクターとして議論され、これから世界で販売される全ての新車に対して、主要市場では2035年までに、全世界では2040年までに電気自動車(EV)などのゼロエミッション車とすることを目指す共同声明が発表されました(※1。英国、スウェーデン、カナダ、オランダなど24カ国と、メルセデス・ベンツ(ドイツ)、ゼネラルモーターズ(米国)、フォード(米国)などの自動車メーカー11社・団体などが同声明に署名しました。一方、日本、米国、中国、ドイツ、フランス、イタリアなどの政府や、日本の各自動車メーカーや、フォルクスワーゲン、BMWなどは同声明に署名していません。

日本市場では普及している殆どの電動車がハイブリッド車(HV)であることや、HVから電気自動車(EV)に切り替えに伴い、、関連する国内企業にも大きな影響が出るため欧州のようにEV普及を全面に押す選択には簡単に舵を切れない背景があります。

また欧州と日本では自動車業界全体でのカーボンニュートラルに対する考え方の違いもあります。欧州のカーボンニュートラルは走行中の車から二酸化炭素が排出ことが重要視されていますが、日本は製造から最終的に廃棄になるまでのライフサイクルアセスメント(LCA)全体を考えるという、さらに地球環境を考えたスタンスと言えます。

カーボンニュートラルを推進するメタネーション

LCA全体を含めたカーボンニュートラルを日本の自動車業界が実現するためには、自動車を電動化のみならず、自社工場から排出される二酸化炭素をどのように減らすかも重要になります。日本の各自動車メーカーは、工場で排出される二酸化炭素の回収・貯留(CCS ※2)、さらにはそれを利用するCCSU(※3)に向けて動き始めています。

その方法として注目されているのがメタネーションです。メタネーションとは水素と二酸化炭素を反応させ、メタンを精製する技術のことです。工場の生産工程で排出される二酸化炭素を回収して天然ガスの代替えガスとして利用すれば、二酸化炭素の実質排出量がゼロになります。さらには水を電気分解し、水素もと酵素に還元したグリーン水素を使用し、かつ電気分解時に使用する電力を再生可能エネルギーでまかなうことで環境負荷を与えないという考えです。またメタネーション以外では発酵残渣や排水の処理で発生するバイオガスの活用も天然ガスからの切り替えに対するソリューションの一つと言えるでしょう。

何よりも、メタネーションやバイオガスがメタンを精製するということは、現在の天然ガスで使用しているインフラ・設備をそのまま活用できることを意味します。コスト面を考慮するとそのメリットは非常に大きいと言えます。

計測で工場脱炭素化を支える

ヴァイサラのMGP261 メタン・CO₂・水蒸気マルチガスプローブは、このようなガスの脱炭素化をサポートする計測器です。MGP261はメタン、二酸化炭素、水分を一台で計測できます。また、配管に直接取り付けることができます。(国内防爆取得済)バイオガスなどプロセス中に硫化水素や水分がある環境でも問題なく常時計測が可能です。ガス中のパラメーターを常時計測することでプラントの効率的な運用・収益の確保に役立ちます。

また、同MGPシリーズのMGP262 マルチガスプローブはオフガス中の高濃度の二酸化炭素の計測が可能です。ヴァイサラのMGP261,262はバイオガスやメタネーションにおけるプロセスの運用を計測でサポートします。

まとめ

202010月、政府は2050年までに温室効果ガスの実質排出量ゼロを目指すと宣言しました。(実質排出量ゼロ:温室効果ガスの人為的な発生量と、森林保全活動、植林などの吸収量が均衡を達成し、排出量を実質ゼロにする)。自動車業界もその目標達成に向けた取り組みが急務です。自動車業界のLCA全体を考えたカーボンニュートラルのためには、自動車からの二酸化炭素排出ゼロに向けたアプローチだけでなく、自動車工場のカーボンニュートラルに対する取り組みも重要です。ヴァイサラの計測機器MGP261262は今後考えられるメタネーションやバイオガス精製プロセスの最適な運用をサポートします。

 

1 UN Climate change conference UK 2021
https://ukcop26.org/cop26-declaration-on-accelerating-the-transition-to-100-zero-emission-cars-and-vans/

2 CCSCarbon dioxide Capture and Storage 二酸化炭素回収・貯留   

※3 CCUSCarbon dioxide Capture, Utilization and Storage 分離・貯留したCO2を利用

 

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ブログ寄稿者: 荒井良隆

Yoshitaka Arai

荒井良隆

ビジネスデベロップメントマネージャー

ヴァイサラで15年間培った広範な計測アプリケーションの経験を活かし、業界内の戦略的トレンドと新しい監視ニーズを特定することや、お客様の声を製品開発に反映させることに携わっています。

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